賃貸経営の基礎知識

第28回 入口と出口にご用心!~サブリース契約 (3)裁判例編

米澤 章吾氏(米澤総合法律事務所)

サブリース契約のコラムをこれまで二回にわたり掲載させていただきました。1回目はサブリース契約の入口の落とし穴について、2回目は建物を貸す契約には借地借家法という、借りる側に著しく有利な法律が適用されることをそれぞれお話いたしました。

今回は、その集大成のお話となります。

サブリース契約を締結するに際して、よーく契約書も読んだ、内容も詳しく説明を受けて理解し納得した、だから調印した。

それでも、これからお話するような落とし穴があるのです。

そのサブリース契約では、サブリース会社が建物オーナーに支払う賃料について、2年間は変更しないという約束をしていました。これにより、建物にどんなに空き室が発生しても、オーナーがもらえる賃料にかわりはないので、オーナーにとってはメリットのある約束です。

しかし、契約締結後1年が経過したとき、サブリース会社が突然「賃料を下げてほしい」と言ってきたのです。

オーナーとしては冗談ではありません。「契約書で少なくとも2年間は変更しないと書いてあるじゃないか。だからそんな要求には応じられない」と断ったのです。すると何とサブリース会社は、裁判所に「オーナーが賃料の引き下げに応じてくれないので、借賃減額請求権を行使します」と訴えてきたのです。

賃料は、基本的には当事者双方の合意により決まりますので、その変更も当事者双方での合意が必要になります。

しかし、その唯一の例外が、借地借家法32条に規定されている「借賃増減請求権」なのです。これは、一定の要件をみたしたときには、合意がなくとも、一方の請求により賃料を変えることができる制度なのです。

しかも同32条1項には「契約の条件にかかわらず」と書いているため、契約で賃料を下げない、と約束をしていたとしてもこの請求権は問答無用で行使できるのです。

ちなみに、この1項の但し書で「ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う」と書かれているため、賃料は増額しない、という約束は有効になります。

これはどういうことかと言うと、上記の例のように「賃料を2年間変更しない」という約束をした場合は、オーナー側が増額請求はできないのに、借りている側は減額請求をできてしまう、ということになるのです。

さて、ここで一つの疑問が生じます。

「サブリース契約にも、借地借家法は適用されるの?」ということです。

前回お話したとおり、借地借家法は借りている方に異様に有利な法律です。それは、例えば家を借りている人が簡単に追い出されたりすれば路頭に迷ってしまうので、そういった弱い立場にある人を保護するためという趣旨が強いのですが、サブリース会社は別にそういう立場ではない、という考えもあると思います。

しかし、結論から言うと、最高裁判所でサブリース契約にも借地借家法が適用されるという判断が出されてしまったのです。したがって、上記の例で言うと、サブリース会社は賃料を変更しない旨の特約をしながらも、減額についてだけは借地借家法32条に基づき請求することができてしまうわけです。

さらに、借地借家法がサブリース契約に適用されるとなると、もっと深刻な問題があります。そう、前回お話したとおり、借地借家法によると借家契約をオーナー側はそう簡単には終了させることができない、ということですね。これがサブリース契約にも適用されるということは、当然サブリース契約を終了させようと思っても、オーナー側は借地借家法に基づき、厳格な要件をみたさないと一方的に終了させることができないということになるのです。

このように、サブリース契約は入口も気をつけないといけないのですが、契約終了、つまり出口の部分でも大きなハードルがオーナーの前に待ち構えているのです。

サブリース会社の宣伝により簡単に契約を締結してしまったものの、簡単に終了させることはできず、何かよほどのことがない限りずっと拘束され続けなければならない・・・。

もし、これからサブリース契約を締結しようと思われる方がいらっしゃいましたら、上記のような出口のハードルがあるということを重々ご承知のうえでご判断されることをお薦めいたします。

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