近年、都心部のみならず、地方・郊外の住宅においてもプライバシーを重要視した家づくりや防犯性を考慮した街づくりを推しすすめるあまり、街の中には憩いの場がなくなり、地域のコミュニティが閑散としつつあります。 この住宅は、これまで独立したプライベート空間として敷地の奥に配置しがちだった「離れ」をあえて表へ出し、母屋との間に生まれた路地空間ごと街にあずけることで、近隣住民とのミュニケーションの場を作り出すなど、街と一体化する新しいスタイルを提案しています。
都市型住宅では隣地との間隔が狭く、道路からの距離も短いという環境も多くいかに開放的で住み心地の良い空間を作り出せるかが求められます。
この住宅は、開口部の位置を工夫し外部からの視線を徹底的にコントロールすることによって、都心部であっても窓を大きく設け光や緑を多く取り込みながら目線を制御できる開放的な空間を提案しています。
住人の動線にあたる部分やプライベート空間はしっかりと保護し、逆に2層吹き抜け空間など人が通らない部分には、大型サッシで開口部を最大限に設け視線の位置をずらすように設計しています。
また、開口部の上下部分に庇を設けることで道路レベルからの視線も遮ることができ、オープンでありながらもストレスを感じることなく心地よい開放空間を作り出しました。
壁とガラスの組み合わせを工夫しバルコニーを囲むことで、近隣建物や道路からの見合いを気にすることなくバルコニーを日常的に居室としても使うことが可能になります。
これまで2世帯住宅といえば、親世代が1階に、子世帯が2階となる場合が一般的で、生活リズムの違いから、生活音問題が課題のひとつとされてきました。この住宅は、その概念を大きく変え、それぞれの生活スペースを”縦割り”にして分けることで、音の問題を含め、お互いのプライベートを守り、程良い距離感を確保する空間を提案しました。
お互いのプライバシーを最大限に考慮し、2世帯の交流の場をあえて半外空間に設置しました。そうすることで、交流できる時間帯や条件も限られ、程よい距離感での同居生活を作り出すことができます。
2世帯の領域を左右にはっきりと分けるために、コの字型プランを採用し、それぞれの領域を縦にはっきりと分け、お互いのエリアには立ち入ることができない設計としました。この完全な縦型構造が常にお互いがリラックスできる同居空間を作り出しています。